幽霊と区別がつかないハヤシさん
全くといっていいほど、足音がしないハヤシさん。
存在感も、気配もないハヤシさん。
そこらへんにいる幽霊と区別がつかないハヤシさん。
あるとき、私はひとつの疑問を抱きました。
もしかして……
ハヤシさんって、幽霊?
……ありえる!!
もちろん、世間一般的にはありえない話です。
でも、当時の私にとっては、十分ありえる話でした。
完全におかしくなっていたので。
例えば、課長あたりに、
「今日ハヤシさんが~」
なんて話をしたら、
「え?ハヤシさんは一週間前に辞めたはずだけど?」
とか、普通に返ってきそうです。
それが怖くて、私は課長と話すとき、さりげなくハヤシさんの話を織り交ぜるようにしました。
在籍確認も兼ねて。
その結果、ハヤシさんが辞めているという事実は、特になさそうでした。
ひとまず安心です。
……とはいえ。
いつ、ハヤシさんのフリをした幽霊が現れるかは分かりません。
以前は、ミカちゃんの偽物も現れていたくらいですから。
なので私は、ハヤシさんがちゃんと人間かどうか、こまめに確認するようになりました。
ありえない話ですが、本気です。
完全に頭のおかしい女です。
今であれば、「霊感スイッチ」をオフにすれば、一発で確認できます。
でも当時は、そんな便利な機能は持っていませんでした。
見えたら見えっぱなしです。
(ちなみに、私に霊感スイッチが装備されたのは、この話から2年後くらいのことです)
そんなわけで、たびたび確認していたのですが――
幸いなことに、ハヤシさんのフリをした幽霊が現れることはありませんでした。