幽霊の声とハヤシさん
うめきやさん(うめき声を上げながら、じりじり近づいてくる幽霊です)の声が聞こえてくると、なぜかハヤシさんと目が合うようになりました。
どうやら、ハヤシさんにも、うめきやさんの声が聞こえているようです。
――そうか。
ハヤシさんも、聞こえているのか。
きっと、さぞかし不安に違いありません。
けれど、ハヤシさんは、私がまったく気にしていない様子なので、
「風の音かなにかだろうか」とか、
「よく分からないけど、きっと何かの音なんだろう」と思っているはずです。
ここで私が「不気味な声がしますね」などと認めてしまえば、
これまで逃げていった人たちと同じように、ハヤシさんも二度と戻ってこないに違いありません。
それは、仕事の詰まり具合的にもかなり困るし、
なにより、私自身が怖い。
またここで一人にされるのは、さすがに困ります。
――ここは、知らんぷりするしかない。
そう決めて、うめきやさんの声が響くたびに、ハヤシさんと目が合う、という状態がしばらく続きました。
そして、ある日のことです。
ついに、ハヤシさんが口を開きました。
ハヤシさん「……あのぅ」
未依「はい?」
ハヤシさん「なんですか?」
未依「『なんですか?』って?なにが??」
ハヤシさん「だからその、さっきから……なに言っているんですか?」
――こやつ。
私が、うめいていると思っておる!