幽霊とハヤシさんの足音
あの部屋では、足音自体は珍しいものではありませんでした。
幽霊が多いせいか、いろいろな足音や、ささやき声のようなものが日常的に聞こえていたのです。
ただ、その中でも、やや大きくて現実的な音が、ハヤシさんの足音でした。
そこで私は、それを聞き分けることにしました。
裸足の足音……違う。
靴の音……似てるけど違う。
ヒールの音……違う。
草履のような音……違う。
武者のようなガチャガチャした音……これは論外。
靴の音……似てるけど……違う……?
「あの~」
――ハヤシさんだった。
もう、幽霊と区別がつかないのです。
というか、むしろ幽霊のほうが、はっきりした足音のものすらいるくらいでした。
そのせいで、私は何度も背後から突然声をかけられて、飛び上がるほど驚くことになりました。
そのたびに、少しハヤシさんに笑われたりもします。
逆に、仕事の手を止めて振り返ってみると、誰もいない。
そんなこともあり、無駄に時間を使ってしまうことも増えていきました。
そして気づけば、どうにもならないことで、無駄にイライラすることが増えていったのです。