ハヤシさんのある特徴
ハヤシさんが仕事のことを聞きに来るときのことです。
彼の席は、私の後方にありました。
席を立って、私の後ろまで来るのですが――彼にはひとつ特徴がありました。
足音が、まったくと言っていいほどしないのです。
ほぼ無音です。
そのため、いつ来たのかまったく分かりません。
殺し屋としては、かなり優秀な人材かもしれません。
ある日も、いきなり背後から声をかけられ、思わず飛び上がるほど驚きました。
それが一度ではなく、何度も続きます。
さらに、彼なりの気配りなのでしょうが、
私の仕事の区切りが良さそうなタイミングまで待ってから声をかけてくるのです。
つまり、しばらくの間、私の背後に立っている。
しかも、無音で。
そして、完全な無音状態から、突然後ろから声をかけられるのです。
普通の部屋であれば、そこまで問題ではないのかもしれません。
けれど、あの部屋は幽霊が頻繁に現れる場所です。
かなり驚きます。
あまりにも毎回驚かされるのが悔しくて、私は対策をとることにしました。
耳を澄ませて、ほんのわずかな足音でも聞こえたら、身構えるようにしたのです。
そんなあるとき。
背後から、足音が聞こえました。
そして、そのまま私の後ろで止まります。
――いる。
私の後ろに、立っている気配がします。
(よし、今回はビクッとしなかった。いい感じ。)
いつも声をかけるタイミングを見計らっているのだから、
こちらから先に声をかけてやろう。
そう思い、少し得意げな気持ちで振り返ると――
そこには、誰もいませんでした。
ハヤシさんは、普通に自分の席で仕事をしています。
あの足音は、幽霊のものだったようです。
その瞬間、私は無駄にイラっとし、
なぜかハヤシさんは無駄に恨まれることになりました