山本さんの恐怖体験
その部屋はリフォーム前で、いくつか不便なことがありました。
その1つが、照明スイッチの位置です。
照明スイッチが2~3m離れたところにあるため、電気を消した後に、真っ暗な中を2~3m歩かなくてはならないのです。
2~3mであれば、エレベーターの明かりで歩けるのですが、その部屋の暗さがとても深いのです。
以前書いた備品室も暗いのですが、それよりもさらに深い暗闇なのです。
1人がエレベーターを開けて待ち、もうひとりが電気を消す係をするのですが、とにかく暗くて、闇が深くて怖くて。
いつも仕事終わりには電気を消した後に走ってエレベーターに乗り、二人で争ってエレベーターから降りました。
そんな部屋にも慣れてきた頃、そろそろ帰ろうと思い、山本さんに声をかけると、
「未依ちゃん先帰ってていいよ」
と言われました。
私は、お言葉に甘えて先に帰りました。
翌日、会社に行くと、山本さんと先輩方の数名が楽しそうに話しています。
何を話しているのか聞いてみると、こんな話でした。
昨夜、私が帰ったあと、山本さんは一人で仕事をしていました。
仕事を終え、帰り支度をしていると、いるはずもない子供の声が聞こえてきました。
大急ぎでエレベーターに乗り、エレベーターの閉まるボタンを何度も押しました。
ドアが閉まる時、小さな子供の笑い声が聞こえてきたそうです。
それから山本さんは先輩方のところに駆け込んで、一部始終を顔面蒼白で話したそうです。
けれど、みんな笑って、誰もまともに聞いてはくれませんでした。
私なら分かります。
ありますよね。
それからというもの、山本さんは決して一人で残業することは無くなりました。
